進化する日本の放射線医療－第2回 高精度放射線治療（上）

摘要

がんの放射線治療はいつ頃から始まったのだろうか。高精度放射線治療を紹介する上で欠かせないその歴史的背景と経緯に触れておきたい。ドイツ南部·バイエルンのヴユルツブルク大学物理学教授、ヴイルヘルム·レントゲンは一八九五年、エックス線を発見した。その功績にょり一九〇一年、最初のノーベル賞（物理学）を受賞したことは余りにも有名だが、発見とほぼ同時に、エックス線を使った診断や治療への関心が高まった。未知を表すⅩ記号をもじって名づけられたⅩ線（エックス線）発見の論文が九六年初めに発表され、それを報じるニュースは世界中に衝撃を与えた。生体内部を身体の外から透視できることは、当時の科学技術では夢の世界に等しかった。この新放射線を利用して診断·治療につなげるアイデアや実験が世界中で始まった。