リン酸塩水溶液を用いたマイクロアーク酸化によるTi基板表面への酸化チタニウム薄膜の生成

摘要

MAO法によりチタン金属表面に結晶性酸化膜を生成することを目的とし，電解水溶液の選択性，電解水溶液のpH値とMAO開始電圧及び生成物の関係について検討した．（1）チタンのMAO処理は電解水溶液にリン酸基が不可欠である．基本的に結晶性アナグーゼ膜を生成するが電解水溶液がpH12以上かポリリン酸を含むとき，ルテルの生成が認められた．（2）電解水溶液のpH値が約12以上にならないと酸化膜は安定せず，これ以下の条件では膜の電解水溶液への溶解が大きく，膜厚の成長は小さい．（3）酸化膜は2層構造を持ち，電解水溶液側の層には電解水溶液中のアニオンが混入する，混入したアニオンにより膜内のO~（2-）イオン濃度が高くなると，ルチルの生成が促進される．（4）アナクーゼは孔を待った比較的平滑な膜である．ルチルは孔の縁に柱状に成長し，配向する．（5）電解水溶液のpHが高くなるほどMAO開始電圧は低くなる．