水温変動の底魚資源への影響－地球温暖化は生物資源に悪影響を及ぼすとは限らない

摘要

長い歴史を持つ日本の漁業は近年、窮地に立たされている。担い手不足、魚価安、燃油高騰など原因は様々あるが、最も話題になるのが資源の減少による漁獲量の減少であろう。しかし、本当に資源は減っているのであろうか。私は1998年以来下関漁港および浜田漁港における沖合底曳綱漁獲物の水揚げ統計から漁獲物の年齢構成を求めてコホート解析により資源解析を行い、加入量変動を検討してきた。その結果、資源量は必ずしも減っておらず、増加傾向にあるもの、さらには枯渇した状態から劇的に資源回復したものも数種あることが判明した。本論では、当該漁業および対象資源の概要を述べた上、解析が進んでいる主要対象種の資源の現状、加入量変動について概説し、地球温暖化の影響とも考えられる高水温の資源への影響について考察する。