生物学的ペースメーカ創成をめざしたヒト心房筋細胞モデルの分岐解析に関する一検討

摘要

生物学的ペースメーカ工学とは，ペースメーカ機能を持たない心筋細胞をペースメーカ細胞へ変換する技術であり，植込み型のペースメーカ機器に代わる新しいペースメーカとして注目されている．生物学的ペースメーカの作成にあたっては，種々のイオンチャネルの動態を包括的に理解することが必要であるため，細胞の数理モデルを用いた解析が有効である．本研究はヒト心房筋細胞モデルの分岐解析に基づいて生物学的ペースメーカの創成法を検討することを目的とする．心房筋細胞モデルにおいて異なる時間スケールを持つ変数は詳細な分岐解析の障害となるため，本稿ではいくつかのイオン濃度を定数として固定し，分岐解析やシミュレーションを行うことで，イオン濃度変化が細胞モデルの挙動に及ぼす影響を調べる．