ディーゼル燃料性状と粒子状物質排出特性

摘要

ディーゼル燃料性状と排出ガス特性との関係について研究を実施してきたこれまでの成果を基に，ディーゼル燃料性状と粒子状物質（PM）排出特性との関係について解説した。 セタン価の影響については，明白な傾向は得られず，セタン価以外の燃料性状の影響に加えて，燃焼室形状,運転条件によって傾向が異なることがわかった。 また，蒸留性状の影響については，単気筒エンジンの定常試験では明確には認められなかったが，実車を用いたモード試験では燃料の重質分の増加がPM排出量を増加させることが明らかになった。 特に，厳しい規制に適合した自動車ほどこの傾向が強くなることが注目された。 燃料中の芳香族分の影響については，分割試料混合燃料では，芳香環炭素含有量と粒子状物質排出量が相関していることがわかった。 さらに，燃料の化学構造との関係を調べた純炭化水素混合燃料では,粒子状物質排出との相関係数が高かったのは,芳香環中の4級炭素含有量と炭素／水素元素比であったが，他と指標との差は少なかった。軽油相当留分を含む試験燃料においては，燃料の芳香族性状が粒子状物質の排出に影響していることが，単気筒ディーゼルエンジンの定常運転に加えて，実車のモード運転においても確かめられた。 燃料の芳香族性状を表す芳香環炭素含有量，芳香環中の4級炭素含有量,炭素／水素元素比,およびI.S.指数という4種類の燃料指標はいずれも粒子状物質排出量と高い相関を示し，これらが粒子状物質の排出と密接に関係していることがわかった。 これらの指標は，従来燃料の芳香族性状を表すのに使用されている容積率を用いた指標より高い正の相関を示した。 また，4種類の指標のいずれもが似たような相関を示した原因としては，使用した試験燃料が3環以上の芳香族分を含まないか，含んでいても少なかったためと考えている。