波面制御技術を開拓する位相変調空間光変調器

摘要

光の位相の空間分布を変調することは，光の波面を制御することである。波面制御では光強度の減衰が非常に小さいため，強度変調に比べ格段に高い効率で光パターンを生成することができる。また，波面制御でしか実現できない，非回折光や光渦などの特殊ビームの生成や，空間分解能や集光効率を向上させる収差補正なども可能である。このような波面制御の有用性は古くから認識されていたが，2000年代半ばから位相変調SLMを含む波面制御素子の性能と実用性が大幅に向上したため，注目を集めるようになった。近年は，波面制御技術の開発と，それをレーザ加工や顕微イメージング，眼底イメージング，光マニピュレーションなどに応用する研究が盛んになりつつある。本稿では，液晶を用いた位相変調SLMを説明し，代表的な波面制御技術について概説する。