溶融塩腐食の機構と溶射皮膜の防食作用

摘要

高温腐食は，高温環境で発生する材料の化学的損傷の総称であり，酸化，硫化，塩化，浸炭，脱炭，窒化などの現象が単独あるいは共存状態で激しく起こる腐食損傷のことである．その代表的事例として，ボイラ·ガスタービン·ディーゼル機関などの高温被曝部で発生するバナジウム腐食や高温硫化腐食，廃棄物焼却プラントにおける金属塩化物による塩化腐食などがある．これらの腐食原因となる媒体は，金属酸化物，金属硫酸塩または金属塩化物を主成分とし，溶融状態となって激しい腐食反応を起こすことから，溶融塩腐食とも呼ばれている．ここでは，高温腐食を誘発する溶融塩の種類とその腐食反応の特徴を紹介するとともに，溶射皮膜による防食作用の機構について要約した．