地盤陥没災害と地下空洞調査について

摘要

地下空洞掘削による空洞周辺の挙動は，地質構造，岩盤の力学特性およびその経年変化，空洞の位置や大きさ·形状など，多くの因子に影響される。 しばしば大きな地表沈下や浅所陥没を生じた場合に，その原因追及のために挙動解析を必要とするが，そのような場合には厳密な地質調査や物性試験などを行い，上記の影響因子を十分考慮した解析，例えば有限要素法のような数値解析法を用いて調べなければならないだろう。 しかし，現在は安定であるような空洞に対してその将来にわたる安定性を検討する場合や，広域にわたる採掘跡地の浅所陥没に対する危険度の評価を行うような場合には，十分な調査·試験の結果は用いられず，また，多くの数値解析を行うことも困難な場合が多い。地表面沈下や浅所陥没を発生させる可能性のある比較的浅い空洞としては石炭·亜炭鉱山，鍾乳洞，大谷石採掘場，都市トンネル，地下壕などが考えられるが，ここでは主として亜炭採掘に伴う空洞天盤の崩壊やそれに伴う地表沈下や浅所陥没の現象について説明した。 1970年代に入り東海地方の亜炭田における古洞によって田畑や家屋が陥没の被害を受け，また宅地開発における地盤の安定化が問題になってきた。 1974年，当時の通商産業省名古屋通商産業局が古洞関連総合施策委員会を設けて，空洞充填工事の検討を始めて以来，実地に実験および多量の充填材を用いた実用化試験を重わ,空洞充填工法の開発を推進してきた。 1977年に空洞充填実施の推進母体として日本充てん協会が設立され，亜炭廃坑の陥没防止·地盤の安定化の開発·啓蒙を行うようになってからは，充填材料の供給や配合設計，充填機械の開発·改良，充填工法の検討などがかなり進められ，多くの実績もあげてきている。 今後，陥没事故等の災害防止や地盤環境の改善のために，精度，信頼性，経済性の観点からより良い空間探査方法の改良·開発が望まれる。