冬季土壌凍結がキクネグサレセンチュウ密度に及ぼす影響

摘要

キタネグサレセンチュウPratylenchus penetransは寄主範囲が広く，我が国では北海道から九州まで，さらに全世界的に亜寒帯から熱帯域まで広く分布する．北海道の十勝地方では1960年代より同線虫の発生が確認されており（9），現在では根菜類の被害や畑作地帯での慢性的な高密度状態が問題となっている．本線虫は，キタネコブセンチュウ，ダイズシストセンチュウと共に，冬季土壌凍結が起こる同地域において越冬可能である．一方で，凍結や低温によりこれら線虫の生存率が大きく減少したという報告もある（5）．岩田、広田（1）は，十勝地方の土壌凍結深が年々減少傾向にあることを明らかにし，その理由を積雪深が20cmを超える時期が早まったため，土壌凍結が発達する前に冷気から遮断されたと推察している．本線虫の被害報告は，近年特に顕著になってきており，その理由は，根菜類の大規模な導入や本線虫の増殖しやすい畑作物の輪作体系の定着が主と考えられるが，土壌凍結が起こりにくくなったことも一因である可能性がある．そこで，除雪によって土壌凍結を発達させ，地温低下によるキタネグサレセンチュウの密度変化を，試験圃場を用いて調査した．