遮断器における電磁駆動設計技術

摘要

三菱電機製品の15kV高速開閉器（1998年製品化）や24kV複合絶縁スイッチギヤでは，従来のばね操作機構に代わり，新型の電磁操作機構を採用している。この電磁操作機構の採用により，ばね操作機構で必要であったラッチなどの消耗部品を撤廃でき，グリスレス化も可能であることから，メンテナンスの省力化や信頼性向上が期待できる。 電磁操作機構の開発には，電磁界と運動の連成解析による電磁駆動設計技術の構築が不可欠である。 そこで，高速開閉器をターゲットに等価回路法を用いた電磁界運動連成解析技術を開発し，さらに，有限要素法電磁界解析と運動の連成解析技術を開発し適用した。 当社開発の連成解析技術を用いた電磁駆動設計手法では，動作途中で質量や接圧ばね力が不連続に変化する遮断器の駆動状態を忠実に再現でき，時間分解能を0.5ms以下まで達成している。 また，有限要素法では物体の運動を考慮するのにメッシュ更新を必要とするため計算時間が長くなるのに対し，今回の手法では，渦電流効果を磁束及び電磁力を一次遅れで模擬することで，計算時間を従来の1/10以下にまで短縮した。 この手法の適用により，遮断器の個体差による動作時間のばらつきの机上での仮想数値実験が可能となり，開発期間を大幅に短縮できる。 この設計技術の構築により，当社唯一の開閉極の両方向に高速駆動が可能な15kV高速開閉器の製品化，極めてエネルギー効率の高い24kV複合絶縁スイッチギヤ用電磁操作方式真空遮断器の製品化，さらに，今回，世界で初めて72kVクラスのガス絶縁スイッチギヤ用真空遮断器への電磁操作機構搭載を実現した。