海氷群を伴う津波の陸上遡上による被害想定の研究概要（海氷の衝突破壊·挙動および陸上遡上の実験／数値シミュレーションの試み）

摘要

筆者らは、中規模実験や数値計算による海氷の衝突力や破壊機構の研究［7-8］や、アイスジャム（ice-jam）やパイルアップ（pile-up）形成（Fig.1参照）に着目した、海氷群を伴った津波の陸上遡上の水理模型実験を行い、氷群の有無に応じた建築物前後の遡上水深や建築物に作用する津波力等について検討している［9-10］。さらに、海氷群の離散体性質を考慮し、ice-jamやpile-up形成を再現できる、海氷群の漂流／陸上遡上の数値シミュレーション手法も開発中である。筆者らは、こうした実験や数値シミュレーションにより、氷群による付加的なリスクを想定するとともに、海氷遡上を考慮したハザードマップ作成のための支援ツール、海氷衝突を考慮した石油タンク等の危険物施設や避難施設等の重要構造物の耐氷設計法の構築等といった、津波防災に資する研究に取り組んでいる。本稿では、過去に発生した海氷を伴う津波の被害事例を概観するとともに、こうした筆者らの研究内容と今後の展望について概説する。