食料安全保障情報システム入門——FIVIMSを中心に 連載5脆弱性分析の実例その2

摘要

第4回に続いて、国レベルの脆弱性分析の具体例を紹介します。 前回は食料安全保障システムが飢餓緩和加速計画に 発展的に寄与したフィリピンの例を解説しました。今回紹介するスリランカFIVIMSでは、脆弱性地図作成時の注意点も含め、 データ分析手法の技術的側面を中心に説明しましょう。過去数十年で、スリランカの人間開発 状況は是正され、他の南アジア諸国と 比較して、経済、社会および健康指標 は改善の傾向を示しています。しかし、栄養不足人口は2006-07年の推計で 国民全体の50.7%、 5歳未満の発育 不全児率は21.6%と依然高く （スリラ ンカ国勢調査統計局2006-07年による）、 特に授乳中の女性や5歳以下の乳幼児 は、最も脆弱性が高いグループに属する と考えられています。また国民の15.2% が、経済，購買力が低く食料を入手す ることが困難で食料不安に陥りやすい 貧困層であり、そのうちの93.4%力、 農村地域と農園に住む人々です。さら に近年は、気候変動により干ばつや暴 風雨など異常気象が頻繁に発生し、食料生産に深刻な影響を及ぼしています。 スリランカの気候条件は、本来、多様 な作物の生産や畜産に適しています力、 環境の悪化に伴い、農業はいまやリス クの高いセクタ一となっています。また 化学肥料の過度な使用による作物の質 の低下、土壌疲弊、紛争、経済財政 危機、食料価格高騰、食品安全問題 など、不十分な食料へのアクセスと不適切な食料摂取、利用が、食料不安 の主な原因として指摘されています。