合成生物工学の未来展望:特集によせて

摘要

遺伝子組換え技術を活用して微生物や動物細胞におい て，有用物質やエネルギーなど多くのものが工業的に生 産されてきている.しかしながら，目的物質の生産性を 十分なレベルに上げるのに，試行錯誤的に長い研究開発 期間と多額の資金が必要な場合が多く，ビジネス的にはニーズがあっても，実際に生産できない物質も多いのが 現状である.合成生物学（synthetic biology)は，こうした問題を 克服し，目的とする高い生産性を短時間で達成すること， さらには生物が今まで生産できないと考えられてきた物 質を生産することで，バイオ生産できる物質の範囲を飛 躍的に拡張できる技術として期待されている.合成生物学には，作って学ぶ生物学という基礎的な重要性も勿論 ある力5,ここでは，産業利用に特化した合成生物学を「合 成生物工学」と呼ぶことにし，この点に絞る.