ビフィズス菌を用いたがんの酵素プロドラッグ療法

摘要

2012年2月19日，読売新聞は「ビフィズス菌を使つ て抗がん剤の副作用を大幅に抑える新薬が開発された」 と報じた.このビフィズス菌を使った新薬とは，いった い何ものなのか？微生物有効利用の新しい可能性とし て強く興味をひかれた.この研究の発端は，今から30 年以上も前の研究成果にまで遡ることができる.論文の タイトルは「静脈内投与によるビフィズス菌の選択的局 在と成長」である.つまり，ビフィズス菌を，直接，哺 乳類の血管内に投入したという研究の成果であるり. ヒトの固形がんでは，がん細胞の増殖に血管新生が追 い付かないため，高頻度で低酸素部位が存在することが 知られている.生体での溶存酸素濃度は，生体組織で0.13 -0.21% v/v程度であるが，がんの中心部では0.032% v/v以下であるとされる2).このがん病巣の低酸素部分 で嫌気性菌が増殖してくれれば，嫌気性菌によつてがん 細胞だけを攻撃できるようになるわけである.