産業技術総合研究所における酵母を用いた研究の事例 -発現系、レポーターアツセィの実用化，組換え体の安全管理一

摘要

出芽酵母{Saccharomyces cerevisiae)はこれまでモデ ル生物として広く利用されてきた.本稿では，筆者らが 開発した出芽酵母の新しいバイオテクノロジーツールを 2つ紹介する.また，後半で産業技術総合研究所(産総研） における組換え体に関する安全管理について紹介する.タンパク質発現における低温の利用組換えタンパク質を生産するために，これまでに大腸菌，酵母，昆虫， ほ乳類動物細胞などを宿主としたさまざまな発現系が開 発されてきた.しかし，いずれの発現系についても，問 題点も知られている.たとえば，繁用されている大腸菌発現系では，真核生物由来のcDNAは不溶性の封入体 (inclusionbody)を形成するケースが多く，あるいは発 現しないケースもある.一方，出芽酵母は単細胞真核生 物であり，ヒトなどのタンパク質発現に比較的適してい ると考えられるが，発現量は低いと一般に認識されてい る.日本はヒト完全長cDNAの大規模コレクションを 有しており，これら大量のヒトcDNAを用いてそれぞ れのタンパク質を究現させ，機能を解析することにより， 新規創薬につながると期待されている.