和牛管理のチェックポイント吾：繁殖編

摘要

繁殖和牛は家畜の中では最も健康的な飼養管理下にあると言っても過言ではない。 しかしながら、過度の近親交配が加えられた結果、遺伝的な要因による病気は他の家畜より多い。前回は黒毛和種の繁殖障害について記載したが今回は一般的なものは除き、繁殖和牛に特筆するべきその他の病気について記載する。 黒毛和種の遺伝病として知られているものは牛バンド3欠損症、牛第13因子欠損症、牛クローディン16欠損症、牛チエディアックヒガシ症候群、牛モリブデン補酵素欠損症など5種類である。 いずれも母牛と父牛の両方から遺伝子を受け継いだ時にのみ、その子に発症する病気である。この様な形態は劣性遺伝と呼ばれ、外観は異常がないが、病気の遺伝子を潜在的に持っている牛同士の掛け合わせによって発現する。 平成15年より家畜改良増殖法が変わり、遺伝病因子保有の種雄牛の登録が禁止されたため、古い種雄牛では保有しているものがあるが、それ以後の新規種雄牛では清浄化されている。しかしながら雌牛には保有しているものが多数存在し、また、凍結保存された優良な系統の精液はこれらの因子を保有していても使用され続けるためミ近々にこれらの病気が黒毛和種から排除されることは難しい。 特に雌牛群では法律で規制できないため発現遺伝子量を減らすことはできても、完全に排除することは難しい。 ここでは最も多数の黒毛和種牛群に潜在している牛クローディン16欠損症について記載する。