菌根共生系の生態と機能に関する研究

摘要

土壌微生物の機能を利用し，化学合成資材等の使用を節減した作物栽培技術を開発するための研究が進められてきている．菌根菌は植物の板に共生する菌類である．アーバスキュラー菌根菌（VA菌根菌とも呼ばれる．以下，AM菌と略す）は主に草本類に共生し，土壌中のリン酸を吸収し，宿主である植物へ供給することによって植物の生育を改善する．そのため，リン資源の効率的利用の観点から，AM菌の利用技術の開発が進められてきている．わが国においても，民間企業による接種資材の開発が進められ，現在では地力増進法に定める土壌改良資材として認められている．しかし，80年代当時のわが国における研究基盤は薄く，本邦土壌におけるAM菌フローラについての研究もはとんど行われていない状況であった．そこで，わが国におけるAM菌研究の基盤となる菌の分類的研究から開始し，AM菌利用を進めるための基礎となる菌の機能に関わる生理、生態について研究を進めてきた．