牛ふん炭化物の施用量および多量施用土壌の除塩がコマツナの生育と養分吸収および溶脱塩類折こ及ぼす影響＊

摘要

牛ふん炭化物ほ，家畜ふんや堆肥に比べて施用後の窒素負荷が小さく，新たな家畜排泄物の資源化技術として期待される．しかし，有効利用するには，炭化物中に含まれる高濃度の塩類の処置が問題になる．　 そこで，本試験では，炭施用に伴う濃度障害の発生状況を明らかにし，その軽減対策を検討することを目的とした．黒ボク土および砂質土において牛ふん炭の段階施用と炭6倍（ク溶性P205で900kgha~(-1)相当）施用後の潅水除塩を行い，コマツナの生育および養分吸収に対する影響と2回の除塩に伴う溶脱塩類の組成を調査した．結果ほ以下のとおりである．1）牛ふん炭施用に伴う濃度障害は，黒ボク土ではまったく認められなかったが，砂質土でほ炭3倍区から影響が認められ，炭6倍区で顕著となった．　 2）砂質土での炭6倍区の濃度障害は，除塩1回目の65mm潅水によって，地上部乾物重が標準区と有意差がない状態に回復した．しかし，除塩後においても植物体中のP，‰　 Ca，Mgの吸収抑制が依然認められ，反対にNa吸収は高まった．　3）除塩1回目の溶脱成分ほClおよびKが主体で，それぞれ砂質土では3，774mgL~(-1)，2，069mgL~(-1)，黒ボク土でほ2，025mgL~(-1)，2，517mgL~(-1)の高濃度となった．その他の溶脱塩類ほ概ね1桁低い濃度であり，牛ふん炭施用時の濃度障害の主因ほ，牛ふん炭に含まれる多量のClおよびKによると考えられた．　 4）黒ボク土では，牛ふん炭施用に伴う土壌の塩類集積が顕著で除塩による改善効果ほ低かった．砂質土では除塩の効果が比較的高かったものの，除塩2回の合計130mm潅水によるClの除去量ほ，牛ふん炭施用に伴うCl投入量の約13％に満たなかった．したがって，牛ふん炭施用に際してほ，炭1倍区の施用量程度に留めるか，牛ふん庚申の高濃度塩類の事前除去が必要であると推察された．