逸失底刺網のゴーストフィッシング能力の経時的変化と死亡数推定

摘要

ゴーストフィッシングとは，さまざまな理由で漁業者の管理を離れた逸失漁具のうち漁獲能力を維持しているもの，すなわちゴーストフィッシング漁具が水産生物の死亡を引き起こすことと要約できる。 （「逸失漁具」は，lost fishing gear, derelict fishing gear，abandonedfishing gearの総称として用いている。 ）海鳥や海産哺乳類など一般の水産生物以外の罷網や，さんご礁への纏絡，海底への蓄積，海岸への漂着などの海洋残骸物すなわちmarine debrisとしての海洋環境に対する影響と並んで，逸失漁具がもたらす被害の一つである。 漁具の逸失およびゴーストフィッシングは，持続的な水産資源の利用に向けた漁業管理の視点から，混獲や投棄と並ぶ漁業の抱える無駄の一つとして1970年代から漁業研究者や漁業管理者の間で問題視されてきた。 世界の漁業の開発と管理の基準としてFAOが発表　 した「責任ある漁業のための行動規範」でも繰り返し　 取り上げられ，各国が協力して問題解決に尽力するよう求められている。