ブドウ球菌ェンテロトキシンに関する最新の知見 一特に分子多様性と生物学的多機能性について一

摘要

ブドゥ球菌ェンテロトキシン（Staphylococcal entero-toxin; SE)は黄色ブドウ球菌が産生する菌体外蛋白質毒 素である.近年，SEは古典型のSEA-SEEに加え，新 型SEおよびブドウ球菌ェンテロトキシン様毒素(Staphylococcal enterotoxin-like; SE1)が次々と発見され，現在 SE1Xまで計23種類を含んだェンテロトキシンスーパー フアミリーになりつつある. SEは極めて高い酎 熱性と強い消化酵素抵抗性を有し，食中毒の重要な原因 毒素である4'12'17). SE遺伝子を保有する黄色ブドウ球 菌は，ヒトを取り巻く環境や食品.各種動物に広く分布 している.一方，SEは代表的なスーパ一抗原（superan-tigen; SAg)である.近年，SEに関する研究は単に食中 毒領域だけではなぐブドウ球菌感染症17'19),毒素性 ショック症候群4 M).川崎病9'33),ァトピー性皮膚炎54> などの臨床医学および免疫学の領域においても盛んに研 究が行われている.本稿では，近年発見された新型SE およびSE1を含め，ェンテロトキシンファミリーの分子 多様性，分子疫学特性および生物学的多機能性につい て，最新の研究結果を交えて紹介する.