長野県におけるスキー場開発をめくいる自然保護問題

摘要

長野県の北部，新潟県と接する北信濃は冬季には有数の豪雪地となる，ここは本州の分水嶺にもなる山岳地帯であり，この雪と山を利用してスキー場開発が盛んに行われた結果，日本の中でも最も多くのスキー場が密集する地域となった．同時に，この地域は良好な自然が広く残された地域でもあり，特に志賀高原から苗場山域にかけてはブナと針葉樹の原生林が広大に広がる「上信越高原国立公園」の中核地域となっている．さらに，岩菅山の東側に広がる8，000haもの広大な魚野川原生流域ほ，林野庁による「森林生態系保護地域」に指定されている．国際的な自然保護制度である「MAB保護区」としても，志賀高原は日本の4カ所の中の1つに選定されており，世界的にも重要な自然地域となっている．それにもかかわらず，この地域にはスキー場を主とした新たなリゾート開発が今後もいくつも計画されている．このように，北信濃は優れた山地の自然と，それを利用したスキー場を主とするリゾート開発とが近現して混在し，様々な自然保護上の問題をかかえた地域なのである．（渡辺1990，1994b）．ここでは，その具体例を志賀高原におけるスキー場開発にみながら，その環境保全上の語間層についての考察と提言を行いたい．