人体装着型の環境、生理計測システムの開発

摘要

著者らは，計測の難しい都市街区内熱環境，人体が実際に曝される熱負荷履歴，日常生活時の温熱生理の計測'評価を可能にする「ラグランジュアン人間気象学（LHM)jの構築を試み ている.LHMは，都市で活動する人間が小型の計測システムを装着し，それぞれの移動経路に 沿って環境因子'生理因子の変化を直接計測'評価することに本質がある.本報では，開発し ているLHM用の人体装着型環境、生理計測システムについて紹介する. 本計測システムは気象計測部と人体生理計測部の2つのシステムからなる. 気象計測部：人体への熱負荷算出のために，気温(Ta)，湿度(RH)，風速(U)，短波(S).長波放 射(L)の計測が必要である.Ta， RHは市販のマイクロ半導体センサを利用可能であるが，u,S,L は市販のセンサではサイズ，原理的にLHMには適さない.そこでこれら気象3変数について は新たな計測原理を開発した.それは，サイズ，材質が等しい3球の小型グローブ温度計（直 径12 mm)を利用したものである.3球の内，2球は黒色塗装を施し，1球は白色塗装を施す. 黒色グローブ球の1球には内部に定熱源を与える.すると，2球の黒色グローブ球熱収支式よ りUを逆算することが可能になる（グローブ風速センサと呼ぶ）.また，熱源を付加していな い黒、白2球のグローブ球熱収支式に，求めたUを代入すれば，S, Lを逆算することが可能に なる（グローブ短波、長波放射センサと呼ぶ）.