ウシ体細胞由来核移植胚と単為発生胚の共移植による受胎率向上の試み

摘要

ウシ体細胞由来核移植胚を単為発生胚と共移植し、単為発生胚が産生するインターフェロン⊥タウ（IFN－tau）を補強することで受胎率向上を図った。核移植胚は、新鮮胚移植あるいはガラス化保存後に移植を行い、それぞれ単為発生胚2－3個を共移植した共移植区と核移植胚のみの対照区で比較検討した。 受胚牛については、24頭のホルスタイン種乾乳牛を用い、自然発情またはPGF加投与による発情誘起後7－8日目に胚移植を行った。 妊娠診断は胚移植後40日目に超音波診断装置を用いて行い、分娩予定日近くまで妊娠が継続した個体に対しては、妊娠期間の超過による過大児分娩を防止するために分娩誘起を行った。 新鮮胚移植については、共移植区で7頭に移植したうち3頭が受胎し2頭が分娩した。 流産した胎子の在胎日数は144日で、分娩したものについては280．5±0．5日（分娩誘起処置有り）であった。 対照区では5頭移植したうち2頭が受胎したが、いずれも流産し（在胎日数157．5±18．5日）分娩に至らなかった。 ガラス化保存胚移植については、共移植区で6頭移植したうち4頭が受胎し2頭が分娩した。 流産した胎子の在胎日数は95．5±36．5日で、分娩したものについては280．0±1．0日（分娩誘起処置有り）であった。対照区については、6頭移植うち1頭が受胎し分娩に至った（在胎日数281日、分娩誘起処置有り）。 尚、ガラス化保存胚移植については、移植胚は2個であったが、受胎確認時の胎子はいずれも1個体のみであった。 以上の結果、核移植胚を単為発生胚と共移植することによって受胎率が高くなる傾向があることから、単為発生胚との共移植は、核移植による産子の作出に有効である可能性が示唆された。