ホルスタイン種体細胞クローン牛後代における分娩前後1年間にわたる血液性状の調査

摘要

体細胞クローン牛およびその後代牛の産業、研究利用のためには、これらの牛の健全性に関するデータ蓄積が重要である。そこで、本研究では、乳牛の生体反応として血液成分が劇的に変化する妊娠から分娩、さらに泌乳期の血液性状に関するデータを収集した。ホルスタイン種の体細胞クローン雌牛から一般牛由来精液の人工授精で生産された後代牛雌5頑と、対照として任意に選定した同月齢のホルスタイン種の一般牛雌5頭を供試し、妊娠期から泌乳期（分娩後160日間）までの一般血液検査および血液生化学検査を実施した。その結果、血液一般検査では、後代牛が対照牛より低く推移したWBCや、後代牛が対照牛よりやや高く推移したRBC、Hb、HtおよびMCVなど、初産前後の一部に対照牛と差が認められる時期があったが、倍は正常範囲内であった。その他3項目（MCH、MCHC、PLT）においても後代牛は対照牛と同様に推移した。一方、血液生化学検査結果においては、後代牛では分娩期の3－HBが対照牛より有意に高い値を示すと同時に、分娩期のNEFAと泌乳期のT－CHO、F－CHOおよびPLでは一般牛と比較して有意に低い倍を示すことがあったが、おおむね正常範囲内であった。その他の項目（TP、ALB、BUN、GLU、IP、Mg、Ca、TG、GPT、GOT）では対照牛と同様の傾向であった。以上の結果より、ホルスタイン種雌牛における妊娠期から泌乳期（分娩後160日間）の血液性状に関する各検査項目では、後代牛と一般牛との間に生物学的有意性が認められないことが判明した。