小学校社会科教科書第5学年における農業の外部効果記述の変遷－文部省と民間2社の著作、編集教科書を事例に－

摘要

本稿の目的は，第1に日本の小学校社会科教科書第5学年における農業の外部効果記述の変遷を把握することである。 第2に先の記述の変遷を素材に，戦後日本の多数派の農業観，具体的には農業の社会的意義に関する見解を明らかにすることである。 研究方法は事例研究法を採用した。事例には文部省著作版，東京書籍及び教育出版著作、編集版を選定し，民間会社版に関しては全検定年教科書を悉皆調査した。調査の手法は質的調査である。結論として，1960年から70年の検定教科書の時期は外部効果記述が継続的に希薄であり，1960年代の多数派は農業の社会における価値に閲し専ら食料の供給機能を重要視していること，それが2001年検定教科書以降に外部経済記述が農業単元内に定着しつつあることから，外部経済面に対する価値の比重が2000年前後に著しく増大したことを指摘している。