安定同位体比を用いた森林生態系における硝酸の流出パターンの解析

摘要

森林生態系内での窒素の循環を把握することは、生態系の維持や変動の機構を把握する上で極めて重要である。 森林への窒素の、湿性沈着および乾性沈着によるインプットと渓流水によるアウトプットが窒素循環を考える上での軸となるが、インプットの硝酸のうちどれだけが森林生態系内で使われ、どれだけが使われずにそのまま生態系外へ出てゆくのか、ということはあまり明らかにされていない。 また、一般的に大気由来の硝酸酸素の同位体比は、オゾン酸化が生成に関わるためが非常に大きい値をとり、一方土壌中で硝化作用により生成される硝酸は、土壌中の水及び酸素を硝化細菌が使うため、低い値をとることが知られている（Siekman et. al.，2003）。 そこで、本研究では窒素及び酸寮の安定同位体比を用いることにより、渓流水からの硝酸の流出過程を解析することを目的とした。