生態系の新たな切り口としての安定同位体：安定同位体からみえる生態系のダイナミズム安定同位体比を用いた森林生態系における植物－土壌間の窒素動態研究

摘要

森林生態系での物質循環の実態を把握することほ，健全な森林を維持管理するために必須である．中でも窒素循環については，樹木の成長を窒素がしばしば制限するため，様々な研究がなされてきた．しかし，これまでの研究の多くほ窒素蓄積量の把壇に畢点をおいており，循環の重要なもう一方の要素である窒素フローについて充分研究されているとは苦い難い．窒素フローは生態系の撹乱に対し非常に敏感であるため，これまでの研究手法では現場での窒素フローを捉えることが困難であるからである．ところで，生態系内の生物や生物起源物質は，循環のなかでの位置や生態系内外への生元素の流れがもつ特徴に対応した，固有の同位体比をとることが知られている．本稿では土壌から植物への窒素フローを安定同位体比の手法を用いて解析した研準例を蘭介する．同位体比を用いた植物及び土襲の研琴例の評紗午ついては，米山，笹川（1994），高橋（1996），小川ほか（1997），HANDLEY ＆ SCRIMGEOUR（1997）仁YONEYAMA et al.（1998）なども参照していただきたい．