希少樹種ハナノキは、どのように個体群を維持してきたのか？

摘要

ハナノキ（Acer pycnanthum）は、カエデ属ハナノキ節に属するカエデの一種で、日本の固有樹種である。 その地理的分布は、岐阜県恵那山を中心とした半径約50kmの狭い範囲に限定され、小湿地や谷底部などの水辺域に生育する。 ハナノキは北米東部に広く分布するRed Maple （Acer rubura）に極めて類似した近縁種で、かつては変種として見なされていた。 近年、ハナノキの自生地である湿地、谷地の開発が進み、ハナノキ集団の縮小、分断化が進み、自然個体群の存在が脅かされているためである。 そのため、ハナノキは、日本のレッドデータブック（絶滅を危惧される種のリスト）では、絶滅危惧種（Ⅱ類）に指定され、その保全が強く求められている。 本研究では、ハナノキの自生地に成立するハナノキを含む林分を、調査し、その群集と個体群構造を明らかにし、その林分の成立過程とハナノキ個体群の維持機構について考察する。