水稲個人受託経営の成立条件--岐阜県Ⅹ町K地区（O経営）の事例--

摘要

第二種兼業化が進行している都市近郊での水稲等の土地利用型農業の生産性向上には，作業受委託、農地の貸借が欠かせないものとなっている。 本論文では，岐阜県Ⅹ町の事例を研究して，水稲個人受託の雇用型大規模経営の成立条件に関する調査分析を行った。成立条件には経営の外部，環境条件と経営内条件があると考えられ，雇用型大規模経営の成立にはその両方の条件を満たす必要があると思われる。これらは，以下のようにまとめられる。1）経営外条件①第二種兼業農家の増加により，貸出、作業委託に出される農地が十分あること。 ②作業料金水準が安すぎない（受託費用を下回らない）こと。 地代水準が高すぎない（地代支払後労賃および借入資本利子の確保が可能である）こと。 2）経営内条件①農地返還の確実性に関して地権者の信用を得ること。②生産物の独自の販路を確保し，経営基盤を安定させること。 ③常勤雇用労働者の周年雇用体制を確立すること。 当事例の場合，農閑期（1～2月）は雇用労働者が農業機械の整備を行うことにより周年雇用体制を確立している。 ④機械経費を押さえ機械の効率利用に努めること。当事例の場合，機械整備は従業員が農閑期に行うことにより経費節減を図っている（表10）。 これらの条件がそろって，初めて雇用型大規模経営の成立を見ることが出来ると考えられる。 今後，土地利用型農業の担い手確保のため，これらの点に配慮した環境整備が必要であろう。