利用休止半自然草地における放牧再開が家畜の生産性と 草地性生物相の再生に及ぼす影響

摘要

日本の野草地は，採草，火入れ，放牧などの人為によって 維持されてきた半自然草地がほとんどであるせ,生産様式の 変ィ匕によつて激減している。その中でも放牧によって維持さ れてきた半自然草地は，多くが針葉樹人工林や人工草地に置 き換わり，残った場所でも輸入飼料の拡大および家畜頭数の 減少により，利用放棄が増加した。それに伴い，草地景観や 草地性生物が減少した。北上山地北部の安家森牧野も1993年から休止された半自 然放牧草地であった。その結果，草地部分は，枯草ゃリタ一 で覆われ，周辺からササ，ァカマツ，ダケカンパが侵入し， カヌカ（「芝生のような草地」を意味する方言）景観が損なわ れるようになつた。安家森牧野は，安家森や遠別岳への登山 道を含み，畜産に直接関係しない来訪者によつて景観の変化 が指摘され，その変化が惜しまれるようになった。そこで， 近隣住民の有志が，日本短角種牛の振興，カヌカ景観の再生 およびその両者を通した地域振興を目的に，2000年から放牧 を再開し，現在に至っている（箱石2002 ；大橋2004b ；野木 2005).