農業土木学から地域環境工学へ -農業土木学会これからの10年－

摘要

農業土木学会は本年（1999年．）満70歳を迎える。 これまでの十数年は，学の方向を巡って，本学会は激動の時期にあったと言える。 学問全体にしめる農学のシェアは，国民総生産に占める虚実生産の割合と比較して過大であるという主張があった。 また，農学の中でも，生命科学がこれから大きく発展する部門であるのに対し，農業土木は，すでに役目を果たした部門と見なされ，縮小しても良いという見方があった。 一方，経済発展が必ずしも国民のニーズと一致しないこと，環境問題、資源問題と競合することが覇在化し，「自然と人間の永続的な共生」が国民全体の大きなテーマとなり，「真の豊かさ」は物質的な豊かさとほやゃ異なるという見方が支配するようになった。 多くの都市住民が，やがては田園地域に住み，清らかな水と緑と空気に囲まれて，真に豊かな生活をエンジョイしたいという期待を持つようになった。