マメハモグリバエの発生生態と寄生蜂による生物的防除

摘要

マメハモグリバエLiriomyza trifolii（Burgess）は，1990年に静岡県浜松市のキク産地で初めて発生が確認された海外からの侵入害虫で，原産地は北米フロリダ地方とされている。 現在では西南暖地を中心に全国44都府県に分布が拡大し，施設野菜や花井類の重要害虫の一つとなっている。 本種は，産卵された葉に幼虫が絵描き状の潜孔（マイン）を作る潜菓性害虫の一種で，キク科やナス科など好適な寄主作物では相物体を衰弱，枯死させるほどめ被害を及ぼす（第1図）。また，本種は，最初から有機リン剤や合成ビレスロイド剤など既存の殺虫剤に対する薬剤抵抗性が発達していたため，化学薬剤による防除は困難な状況であった。 静岡県では，キク，ガーベラやトマト，セルリーなど発生地域の主要作物で本種による甚大な被害が発生したことから，発生当初より本種の生態の解明と防除技術の開発に取り組んできた。 その結果，未解明であった本種の増殖能力や移動分散特性，モニタリング方法，寄生蜂放飼による生物的防除の効果確認と現地実証など多くの成果が得られた。 本稿では，これらの成果の中から，本種の発生生態と寄生蜂による生物的防除法に関する知見を紹介する。