酪農及び肉牛生産の総合生産性に対する温暖化の影響—パネル計量経済分析の結果一

摘要

日本農業において酪農と肉用牛生産は，それぞれ農業総生産の9.2%及び8.3% (2011年度時点）を占め， 畜産に対する割合が合わせて56%となっている.他の 農作物に比べ，生産性向上が急速に進んでいることか ら，日本農業の動向を見る上で重要かつ注目すべき部 門である.しかし，将来の地球規模の温暖化により， 生産性の低下が生じ，畜産業の成長の足かせとなる可 能性がある.柴田(1983)は，24-27°C以上の暑熱時 に酪農における乳量と乳質の低下や増体量の減少が生 じることを実験データにより示している.また，夏期 の気温上昇による生産低下を緩和するため，施設費や 薬剤費等の追加コストが必要となる（農研機構，2006). これらの実験室レベルの知見をもとに，マクロの統計 データから気温と畜産生産性の関係を分析し，将来の 温暖化の影響を示すことは，政策的に重要な課題と考 えられる.