農地、水、環境保全向上対策とソーシャル、キャピタル

摘要

2007年度より農村地域における農地、水、環境の保全と質的向上を目的とした「農地、水、環境保全向上対策」（以下，向上対策）が施行された．過疎化，高齢化，混住化等の進行に伴う農村集落機能の低下により，農村の原風景としての景観や自然環境が損なわれつつある状況に対応する形で向上対策は誕生したのである．この対策には従来の農村振興政策と決定的に異なる特徴がある．それは，後者が農家による活動を支援の対象とした政策であるのに対し，前者は農家だけではなく自治会，地域住民，学校、PTA，NPO等といった非農家グループも含めた地域ぐるみでの共同活動（農地、農業用水，施設，農村の自然、景観などの共同保全活動：以下，共同活動）を支援の対象とする点である．ここには，地域の連携を高め，将来に亘って持続可能な地域づくりを目指すという思いが込められている．向上対策とは，農村地域の資源および環境の保全政策であり，それと同時に地域一体型の地域活性化政策でもあるのである．