施設園芸の快適化のための環境制御

摘要

わが国の農業の弱体化が懸念される中で園芸用施設の設置面積は着実に増加し，平成11年には53,518haに達している。 この面積は全耕地面積の約1％強にしかすぎないが，その重要性はきわめて高い。 同年の農業粗生産額は9兆4,181億円であるが，このうち園芸作物である野菜，花き，果樹の合計は3兆4,610億円（36.8％）を占め，米（26.1％）や畜産（26.1％）の生産額を遥かに凌いでいる。 その多くは施設園芸によるものであり，代表的な果実的野菜であるトマト，キュゥリ，ピーマンでは約70％，イチゴでは99%，露地メロンでは60％，温室メロンでは100％が施設生産されている。 さらに，花きや果樹においても施設化が進んでいる。 しかし，わが国の施設園芸は小規模な温室が中心であり，依然として労働集約的である。 2001年4月にセーフガード暫定措置が発動されたことは記憶に新しいが，高収益が期待されている施設園芸においても，輸入農産物に対して国際競争力を確保することが重要な課題となっている。 したがって，より一層の低コスト化，大規模化，周年利用化，労働環境の快適化，高齢者への対応，若手の参入など解決すべき問題は多い。