農用家畜の苦しみ，福祉，それから有畜農業の復活へ

摘要

今日，例えば雌豚は鉄パイプのストールの中に，そして採卵鶏は針金のケージの中に収容され，多量の薬剤添加飼料を与えられている。 しかしほとんどの畜産関係者は，それらは土地ならびに労働節約的で，大量生産に最適の飼育形態として全く疑問をもつこともなく受け入れ，豚と鶏（農用家畜）を「閉じ込めた」とは考えていないように思われる。 ところが彼女らはもちろん人間には劣るが，心的な過程を有するが故に苦しみ，かつ痛覚をもつが故に痛みを感じる（類推法による）とされる。 動物は本来種によって異なるが，それぞれ好ましい個体占有空間をもつが，狭くて窮屈なストールやケージの中では，彼女らの個体占有空間は極めて小さい。 そのことが農用家畜を心理的に圧迫しているばかりでなく，体の自由な動きを奪い，かつ運動不足に苦しめている。