海洋牧場

摘要

近海漁業資源を家魚化（水産庁の造語）しようという海洋牧場化構想は，1977年より200海里時代を迎えて，日本の水産資源確保のために重要な課膚として取り上げられるようになった。 水産庁が1980年より9カ年にわたる大型枠総合研究事業として，マリンランチング計画を実施してから海洋牧場（marine ranching, マリンランチング）という水産用語が一般に使われるようになった。 海洋牧場とは「沿岸、近海の有用魚介類資源を人間によってより手にとどきやすく，より管理しやすいものにする形態」とマリンランチング計画で定められ，この計画を推進する基本理念となった。 多くの実施例が“海洋牧場”と言う名で行われてきたが，同年代より「栽培漁業」という用語も広く使われるようになった。栽培漁業の定義は海洋牧場化された漁業と言える。 養殖は定められた空間に魚介準を成育させるが，海洋牧場は解放的空間に魚介類を成育させて，海の生態系をうまく使って水産資源を増大させる。 海洋牧場事業は次のように分けられる。 （1）魚介類の計画的種苗生産，（2）放流海域を住みやすい環境にするために魚礁の設置などの漁場整備，（3）漁獲サイズや漁獲期間などを定めた資源管理などがある。