風を利用した病害抑制技術の可能性

摘要

近年の原油高騰などを背景に，農業生産現場においても動力源として電力の有効活用が望まれている。当所では，農業電化利用技術並びに研究開発の現状調査を実施したところ，環境制御技術による生産物の高品質化、差別化，病害虫抑制技術に対する要望が高まっていることが明らかとなった。現在，農作物に発生する病害虫に対する防除対策は，化学合成農薬の散布が主体となっている。最近の化学合成農薬は，特定の部分だけに作用する選択性の高いものが多く，安全性が高いことがメリットである。一方で，病害防除の点からは特定の遺伝子の変異だけで，薬剤耐性菌が出現するというデメリットがある。つまり，同じ系統の薬剤を連用するなどにより，薬剤耐性菌が出現し，耐性菌の密度が高まれば，その系統の薬剤の防除効果が低下することがある。近年，耐性菌出現の懸念が少ない生物農薬が普及してきているが，まだそれだけでは高品質の農作物を収穫することば難しく，化学合成農薬による病害防除は不可欠である。従って，薬剤防除だけに頼らない防除対策をとり，薬剤の散布回数を減らし耐性菌の出現を回避し，使用できる系統の薬剤を残すことが重要である。また，近年推進されている環境保全型農業の取り組みの一つとしても，薬剤防除以外の病害抑制技術は必須となっている。