日本作物学会国際シンポジウム〔1〕－世界の食糧安全嘩障と作物生産技術－基調講演「百億人をいかに養うか　－作物生理学者の目から－」

摘要

食糧需給の動向（肉食化，食糧に占める作物の割合等）および食糧増産の過去の経緯から判断して，食糧供給に対して人口圧がかかり続ける今後50年間，少数の作物（小麦，イネ，トウモロコシ）が世界の食糧保障の鍵を握っている。 穀物の平均収量は，図1に示すように1960年以降，世界の人口と歩調を合わせて増加してきた。 1960年以前の食糧増産の主因は耕作面積の拡大であったか，それ以降の食糧増産は収量増加に依るところが大きく，それには栽培技術の進歩と革新および潅漑面積の拡大が大きく貢献してきた。 都市化より農業に適する一等農地がこれからも失われることを考えれば，これからの食糧の増産は，とりわけ主食となる少数の作物の単収増加に依らなければならず，世界の人口が八十億人となる2020年には穀物の全世界平均収量は4t／ha，百億人となる2050年には5t／haの高水準が必要と考えられる。このような作物での非常に高い収量水準は，世界の作物科学者のたゆまざる研究によって達成されるであろう。