球根，宿根および花木の休眠打破に関する研究(1)一エタノールなどの効果一

摘要

植物は，環境不良条件に置かれると生育を中止し 休眠（分裂組織を含む植物器官の一時的成長停止） に入るものが多い.休眠は，温帯で生育する宿根類 や花木などでは秋季から冬季の低温期にみられ，地 中海沿岸に生育する球根類は夏季の乾期にみられ る.前者ではある一定の期間の低温に，後者では高 温乾燥に遭遇しないと生長が再開しない.休眠を考 えた時，単に外環境が植物にとって一時的に生長に 不適な場合による強制休眠（環境休眠）と，外部環 境が良くなつても器官自身の生理的内部要因によ る内生休眠（自発休眠）に分かれる.今回問題とな るのは後者であり，長く不良環境が続くと内生休眠 に入り，温度を上げたり水分を与えたりして生育に 好適な環境になっても，発芽しなくなる.また発芽 しても茎の伸長や葉の伸展が十分でない場合は，促 成枝物や促成開花の実用的障害となる.そこで，人 為的に休眠を打破するのに低温や高温処理が施さ れている.さらに，休眠期間を短縮したり休眠打破 効果を高めるために，薬剤処理も併用されている.