農協論の視点から

摘要

これまで農協は，地域農業の生産性向上に努めてきた　 ただ，そこでは流通面を中心とした効率性が追求され，農家の選別が避けられない構造問題に対しては，消極的な姿勢をとってきた．その理由の一つとして，農協が集落を基盤とした組織であることがあげられるこの点をガバナンスという視点から見れば，農協は集落を単位として選出される総代、理事によって統治され，集落代表理事は集落間の相互監視を担い，集落は農家間の相互監視を担ってきたと言えよう．このことは，農業経営の異質化が進んでいるのにも関わらず，集落あるいは農家間の平等性を堅持しようとし，各主体の突出を難しくする統治システムであることを意味している．農業経営の多様化, 異質化を前提とするならば，その実態に即した公平な事業展開がなされるように，組織化についても見直さねばならないだろう．