天敵をうまく利用した害虫管理の新しい考え方

摘要

植物はさまざまな植食者（害虫）の攻撃を受けた際に，防衛する手段を多様に進化させてきて小る。 害虫に対して毒物質などを生産する防衛方法（直接防衛）はなじみ深いが，軍虫の天敵を積極的に利用して，食害している害虫を退治してもらおうという間接防衛も看効な防衛手段である。 本稿では，この植物の間接防衛について概観し，それを利用した害虫管理への応用について述べる。当たり前のようだが，相物と動物は大きく異なっている。 まず動物が空間を移動できるのに対し，植物個体は発芽したその場所から移動することは基本的にできない。また動物が目的機能を細分イヒさせた器官を特定の数持っている（目が2つ，鼻が1つ，耳が2つなど）生物なのに対し，植物では根，根毛，茎，葉，花などの器官分化はあるものの，その数は決まっていない。 地上部に注目した場合，植物は葉および枝（シュート）を単位とし，それらの最適な配置と繰り返しを実現している生物といってよい。 さらに，動物の器官には全能性はないが，植物によっては薬や根を水差しにすると完全な植物体を得られる場合がある。まだまだ違いはあるだろう。