水源かん糞機能

摘要

本邦各地の森林水文試験地の年間水収支から水流出量は平均的には降水量の約60％であるが，立地環境の影響を受け地域性を示す。 森林流域の貯水量の最大値はおおむね150～300mm程度と見積もられるが，動的，物理的な貯水量評価法の開発が進められている。 森林の伐採，植栽，間伐といった施業や作業が水流出量に及ぼす影響はある程度定量的に評価されているが，水源かん養機能を向上させる施業や保育法を見出すには，葉量，群落構造，生長量などの森林情報の収集も必要である。森林，林業基本計画では森林が有する多面的機能の発揮のため，森林を「水土保全林」，「森林と人との共生林」，「資源の循環利用林」に区分し，施業を通して機能発揮に適した森林への誘導が計画されている。 この3区分の中で，整備対象面積は「水土，保全林」が一番広い。このことは，森林の水流出に関わる機能は住民の関心も強く，その機能の高度な発揮に対する要請が大きいことを示している。 このような森林の機能は水源かん養機能として知られ，それには洪水緩和，渇水緩和および水質保全などの機能が含まれており，森林による水量と水質の調節機絶として位置付けることができる。 森林の水源かん養機能は流量の変動抑制と遅延により，その一様性や安定性を高めるとともに，水質を浄化する森林の働きとみなすことできる。