農地利用の現状と農地制度改正議論の動向ー耕作放棄地問題を中心にー

摘要

本稿に与えられた課題は、平成一四年度食料,農業,農村自書（以下、「白書」）に見る農地利用の現状を耕作放棄地対策を含めて検討することにある。 担い手育成を含む農地利用の動向は、第二章の「構造改革を通じた農業の持続的な発展」　 で取り上げられ、特に第二節の生産構造の現状と構造改革の加速化の項で検討されている。 平成一四年度は、米政策の抜本的な見直しが進められるとともに、いわゆる「食と農の再生プラン」を契機に構造改革の加速化として農業構造改革特区構想、農業生産法人制度をはじめとする農地制度改正議論が活発化するとともに、農協改革議論が本格的に取り組まれた年である。 食糧管理制度、農地制度、農協運営という戦後農政の根幹となる諸制度が新基本法体系に合わせて再度見直しが進められているのであり、「新政策」移行後の諸政策の総決算的局面に入ってきていることを示唆している。 特に、農地制度改正の議論は、経営体育成方策としての規制緩和論から耕作放棄地の激増という耕作者主義の限界への対応として提起されてきている点に特徴があり、農業の縮小再編に伴う農地利用の空洞化が、農外資本参入のつゆ払い的位置にある点が注目される。