地域づくりを促す地域内の条件と外部支援の効果的活用のあり方: 茨城県常陵田巿里美地区の事例より

摘要

過疎対策や農山村の再生が重要視されるなか，国レべ ルでもさまざまな施策が検討され，それに伴い，国や地 方自治体では，新たな助成金等の制度を設けてきた。そ うした制度の中には，多様な主体が応募できる提案型の 事業も含まれ，内閣府による「地方の元気再生事業」や 国土交通省の「『新たな公』によるコミュニティ再生事業」, 農林水産省の「農山漁村（ふるさと）地域力発掘支援モ デル事業」などが例として挙げられる。それぞれの地域 では，地域づくりに関わる各主体が，これらの制度を活 用しつつ，地域の再生に資する活動を実践している。こ うした実践のなかには，成功事例もみられるものの，成 果が+分に発揮されていない事例も少なくない。とりわ け，国の事業に関しては，十分な成果が発揮されていな いことも一因で，民主党政権下での事業仕分けの対象と され，議論の末，いくつかの制度が廃止された。しかし ながら，こうした議論では，成果についてのみ論じられ ることが多く，助成金等の制度の活用が決定された時点 での，対象地域内の地域づくりを可能にする基本要素が どのような状況であったかについては，十分に議論され ていない。地域づくりを目的とした助成金等の外部支援は，対象 地域内の固有の状況に応じて，段階的に活用されること で，地域全体としての課題の解決，ひいては地域全体と しての持続的な発展につながると予想されるため，外部 支援投入時の対象地域内の状況を分析し，地域内の必要 条件を一般化することは，今後の外部支援審査時の基準 を示すことにつながり，有用であると考える。