イネ各種菌核病を引き起こすRhizoctoniaびScleotium菌の菌核発芽様式

摘要

イネの赤色菌核病（病原菌Rhizoctonia oryaz).紋枯病(R.oryazAG-1IA),褐色菌核病、.R. oryzae-sativae), および球状菌核病(Sclerotium hydrophilum)は，我が国のみならず世界の稲作地帯に広く発生し，その収量だけでなく 品質にも大きく影響する病害である.これら4種類の菌核病の病原菌菌核について，各種培養温度における発芽率と菌生 育との関係，発芽開始時間，発芽菌糸数，発芽様相を調べることにより各種病原菌の菌核発芽時における特徴を検討し た.培養温度5-40C (培養時間：48時間）の7区のうち15tでは，4菌種とも菌生育は見られたが菌核発芽は見られなぐ また菌核発芽率が高率（50-100%)となる温度域は4菌種いずれも20-で，菌生育率が高率（50-100%)となるS 度域（25-35°C)と比べ広いことが判明した.菌核発芽の開始時間については，概して赤色菌核病菌と紋枯病菌は6時間 と早く，球状菌核病菌と揭色菌核病菌は12-24時間であった.また.赤色菌核病菌では菌核表面全体から放射状かつ直線 的に菌糸発芽が密生して観察され，1菌核あたりの発芽菌糸数も26-32本（培養24時間後）と多かったが.一方，他の3菌 種は7-17本と比べ著しく少なく ,菌糸発芽が比較的疎であった.このような各RhizoctoniaおよびSclerotium属菌におけ る菌核発芽についての諸特徴は，イネ体上で類似病徴を示す病害の病原菌を迅速に同定する場合や.イネ株内または水田 内での各種菌核病の進展状況を理解する際の重要な知見であると考えられる.