淡路島における江戸時代後期の林野の分布と昭和時代との比較

摘要

近年地理情報システムの発展とともに，古地図を用いて過去の土地利用や景観を復元しようとする研究が国内外を問わず，数多くなされるようになってきている。 過去の土地利用や景観，またその変遷について知ることは，今後の空間計画を考える際に必要不可欠であるとされている。 我が国においては，エネルギーや資源において開放系にある現代の社会に比べて明治時代の文明開化による大きな変化をむかえる以前の日本の社会はより循環型社会であったのではないかという視点から，江戸時代の景観や土地利用についての研究がなされるようになってきた。 循環型という捉え方ではないが，地域資源の連鎖性が維持されていたという視点からも同様の研究がなされている。 過去の景観や植生を復元しようとする研究はさらに先駆けてなされてきた。 我が国ではこのような研究の多くが，明治時代初期から中期にかけて近代的手法によって作製された地図を用いて，江戸時代の土地利用や景観，植生の復元を試みてきた。 それは，広域的に内陸部についても整備された近代的な地図としては，明治時代に入り旧日本陸軍によって作製された迅速測図が最も古いものとされているからである。