X線透視検査により診断した乳牛の機能性腸閉塞の1例

摘要

ヒトの腸閉塞には捻転，重積，絞指による機械的腸閉塞と器質的病変を伴わない機能性腸閉塞が知られている。 機能性腸閉塞は開腹手術後に二次的に起こることが多く，神経系の異常，腸の血液循環の障害や腹膜炎などの炎症の波及が原因とされている。 しかし，機能性腸閉塞について，午での報告は少なく，発生実態も不明確である。 筆者らはⅩ練達視検査によって診断し得た乳牛の機能性腸閉塞に遭遇したので，これを報告する。症例はホルスタイン種，雌，10カ月齢，231kgの育成午であった。 初診時の所見は食欲廃絶、元気沈嚢し，起立を嫌った。両膝部は落ち込み，下腹部が膨隆していた。 肛門では便を絞り出すような運動をしていたが，排便を認めなかった。 痛痛症状はみられなかった。 菓告で，前日までに異常は認められないとのことであった。