エネルギー政策は転換したか—危うい菅内閣の「脱原発」政策-

摘要

日本は一九九〇牟のバブル崩壊以降長期不況の中にある。二〇〇〇年代中盤からの景気回復も目に見える形ではなかった。二年前に初めて誕生した民主党政権は、昨年の参議院議員選挙で菅直人首相が唐突に掲げた消費税増税問題によつて敗北し、参院民主党は少数与党に転落した。菅首相は新経済成長政策を掲げ、原子炉メー力—や電力業界、民主党の有力支持母体である電力総連ゃ電機連合、基幹連合(旧造船重機労連、鉄鋼労連)などの主要民間労組などをバックに、積極的な原発ビジネス政策を展開する。その政策を支えた大義名分は、二酸化炭素を排出しない原子力発電は地球温暖化防止の切り札だという、いわゆる二酸化炭素地球温暖化説であった。停滞状況にある日本に対して、経済成長の著しいアジァを中心にこの二、三年世界各地で原発の受注合戦が展開されてきた。国内の電力需要の拡大が望めない時代に入つた電力業界は原発建設計画を先延ばししてきたが、海外での事業展開に収益源を求めるべく、 二〇一〇年一〇月経済産業省の後押しで東芝、日立、三菱の三社と共同で海外原子力開発株式会社を設立し、「日の丸原発」の輸出に官民挙げて参入したのであった。日本はそれまで原発建設の受注競争で、アラブ首長国連邦では韓国に、サウジアラビアではフランスに、またベトナムの第一期計画ではロシアに敗北していたので、ベトナムの第二期原発建設計画については菅政権あげて受注に動いたのであった。