マーケテイングと新しいビジネスモデルによる地域振興～多様なニーズに応えた多様な流通，多様な生産者による多品目生産～

摘要

本稿は，イン，ショップという新たな農産物の販売方式を開発，定着させたことが有名であり，農協改革の先進として注目されている甘楽富岡農協の取組をむらづくり，地域農業振興という視点から紹介し論じることを目的とする。 本農協管内では，農産物輸入自由化の過程で「養蚕50億円，こんにやく30億円の販売高は数年で最盛期の20％に激減した」するとともに，農業労働力も離農が進行した。 その上，桑園や傾斜地の畑が遊休化しさらに，米の生産調整の強化により水田の土地利用率が低下した。 まさに，様々な面でも地域農業は崩壊の危機に瀕した。 平成6年に甘楽富岡農協が合併で成立した時期は農業の危機に直面した時期である。 合併を契機として，約100億円に近い売上高のある多品目の野菜産地として再生することに成功した。 産地としての再生手法は，専業的農家を中心とした大規模産地化と市場出荷型とは異なるものである。 多様な生産者による多品目生産，多様なニーズに応えた多様な販売チャンネル型による再生を特徴としている。また，生産費を含めたコスト積み上こげ型の価格，流通コスト設定ではなく，「売れる価格と品質」を前提に生産手取最優先を貫くコスト削減型システムへの転換でもある。 つまり，価格支持政策や市場出荷型のもとで産地づくりから国際化，市場原理のもとでの産地づくり，地域農業再生への転換のモデルでもある。